イヴ・サンローランを見て

映画「イヴ・サンローラン」を見ました。

ブランドものは無縁且つ苦手の私ですが、あの素敵なロゴは若い頃から気に入っていました。でも、せいぜいハンカチや口紅くらいしか手にしたことはありませんし、フランスの有名なデザイナーといった程度の認識くらいしか無いまま見に行きました。

この映画では、彼の天才としての輝きの部分と同時に、天才であるがゆえの繊細で脆い部分、孤独と苦しみと自己破壊へと向かってしまう部分、そしてそれを支える周りの人間の愛情と苦しみが描かれていました。ファッションのことはわからなくても、見ごたえがありました。

フルに自らの才能を燃焼させた意味では素晴らしい芸術家としての人生だったと思いますが、天才の裏側の苦悩を垣間見るにつけ、やはり天才という特殊な運命を背負って生きなければならない事実は、見ている側は身が引き締まる思いと同時に気の毒な思いもしてしまいます。

バックにマリア・カラスのトスカの歌が流れるのですが、イヴ・サンローランの後期作品とオペラ「トスカ」のイメージは微妙に違うのですが、デザイナーであるイヴ・サンローランの人生と歌手マリア・カラスの人生とを重ねていたのかもしれません。

長年のパートナー(男性)の深い愛情と時には屈折した愛情も自然体で描かれています。天才の苦悩と対峙し、包みこんできた大きな愛情が現実においても、「イヴ・サンローラン」という映画の中でも、ある種の品格を与えていたようにも感じました。

とりあえず我が身が天才でなくて良かった、良かった。