幸せな仕事

 毎年この時期、玄関先に植えてある「ノウゼンカズラ」が我が家の入り口を飾るかのように咲いてくれます。

この花は夫の母が植えてくれたもので、もう20年ほどになるでしょうか。だんだんに大きくなり、今では花火のように咲いてくれます。

ただし、この花は花が咲き始めると、つぼみから花から道にぼろぼろとたくさん落ちます。その上、蟻も蜂も喜んでやってきます。おかげで毎朝、毎夕の掃除が欠かせませんし、成長旺盛なので、通り道の邪魔にならないよう、剪定もひと夏で数回必要です。

今朝は、いつもの掃除をしていたところ、ちょうど通りかかった散歩の方が声をかけてくれました。

「きれいですね。みごとですね。」と。

私は「有難うございます。でも、花が良く落ちるので毎朝掃除なんですよ。」と答えました。

すると、そのご婦人は「幸せなお仕事ですよ。」とにっこりされました。

「幸せなお仕事」…なるほど…そう言われて、そんなことに気づかずにいた自分に、ハッとさせられました。忙しいときなど、植えてくれた義母を恨みたくもなることもありましたから、その方のにっこりされたお顔を見た時、そんな自分の狭い心が溶けたようにも感じました。

夫などはこの時期の我が家のシンボルのようなこの花が大好きで、眺めるにつけ笑顔がこぼれますし、考えてみればこれまでも多くの方から、褒めていただいているのです。

そうでした。世の中、自分で気づかずにいる「幸せな仕事」があるものでした。