45年前の楽譜

音大に入学した当時、私はピアノの弾き方がわからないのに、自分が下手なことは痛々しくわかるわけで、どうやっても上手な方のようには弾けず、人生暗く感じるばかりの日々でした。そんな中、唯一楽しかったことは、オペラというものを知りたくて入部した、オペラ研究部での活動でした。

当時、声楽科の友人といるほうが居心地が良かったり、ピアノのソロ曲よりオペラの伴奏が面白かったりしていただけのことなのですが、この経験が45年経った今、繫がっています。

今年、大宮音楽家協会というところに入会したところ、8月に「魔笛」を抜粋で演奏するということで、その伴奏を何曲か受け持つことになりました。

それで45年ぶりに音友の世界歌劇全集という黄土色のスコアを棚の奥から引っ張り出しました。(楽譜はとっておくものだなと捨てなかった自分を褒めつつ)「魔笛」とか「フィガロ」とか「奥様女中」とか「セビリアの理髪師」とか抜粋で楽しんでいた学生の頃を懐かしく思い出しました。

そして、同時に思い出すのは、当時オペ研のリーダーだったオーボエの西本君です。彼は本当にオペラオタクで、心底オペラが好きで心から楽しそうに指揮をし、話も専門のオーボエではなく全てがオペラと繋がっていました。卒業後、オペラ研究所で指揮者として活躍なさっていると聞いていましたが、残念なことに若くして亡くなられたようです。

今、コンサートへ向けて「魔笛」を練習している私は、当時の彼のオペラへの愛がとても勉強になっていることを感じます。「そう、面白いよね、ここ。」なんて今ならそんなことを対等に話せそうなのですが。

県展へ行く

先週金曜日に毎年開催される埼玉県の県展を見に近代美術館へ行ってみました。この数年続けて見に出かけています。

日本画と洋画しか見ませんでしたが、今年は力作が多いと感じられ、見ごたえがありました。とは言え絵画に対する見方は全くのシロウトで、自己流のまま対峙することしか出来ないので、直感で「わっ、いいな」とか、「よく見るとなるほど凄いな」とか、「じっくり見ていたい絵だな」とかの判断です。

気に入った絵の写真をいくつか撮ってはきたのですが、ブログに載せて良いものかわかりませんので、主催の埼玉県美術家協会へリンクしておきます。
埼玉県美術家協会
私がずっと見ていたいと思った絵は、今年の入選作の中の子牛の絵「牛舎にて」や「雑木林」やその他にもいくつかありましたが、画家の作品のコーナーでの昨年亡くなられた塗師祥一郎氏の「雪空」にはとても引きつけられました。技巧が表に出ていなく、雪空の暗さと静けさと希望のような明るさと温かさが淡々と表現されていると思いました。それぞれを鑑賞しつつ、こんな音楽が出来たなら、ピアノが弾けたならなどと思うのですが、見果てぬ夢です。