先月末に、汐留ベヒシュタイン・サロンにてピアニストのイヴ・アンリ公開レッスンがあり、聴いてきました。イヴ・アンリ先生はパリ国立高等音楽院の教授で、世界的に演奏やマスタークラスでの指導をしておられます。実は私はこの催しもイヴ・アンリ先生も知らないまま、主催者から電話をいただき、たまたまその日が空いていたので出かけたのでした。
それが私にとっては大当たり。おそらく客席が少ないので電話を下さったのだと思いますが、なぜ?こんな素晴らしい先生の公開レッスンが知られていないの?もったいないなと不思議に思いました。
私が聞いたのは、モーツァルトのピアノソナタ8番、ショパンのバラード1番、シューマンのアラベスク、スクリャービンのエチュードでしたが、それぞれ、先生が生徒の傍らのもう1台のベヒシュタインピアノで弾きながらのレッスンで、その音楽に心が動かされました。美しく楽しい!感覚と解釈に裏打ちされた優雅さとまろやかさと理性的な迫力。すっかりその演奏の虜になりました。
私が一番に感じたことは、先生は、まずたくさんの音楽が心と体に満ちていて、その音楽の息吹を作曲家が残した楽譜の上に乗せ解釈をするという順番なのが、受講生は、楽譜を目と頭で読み取った後、それを体に次に心へと音楽的に満たそうと勉強するという順番であるところが決定的に違うと思いました。
まるで、パリに1日行ってきたような、大袈裟ですが私にとって革命的な日となりました。